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 飄々としつつ、柔らかい…不思議な空気をまとった印象の中島歩。2013年に、主演・演出、美輪明宏の名舞台『黒蜥蜴』の雨宮潤一役でデビューし、翌年には連続テレビ小説『花子とアン』にて、仲間由紀恵扮する蓮子様と駆け落ちする宮本龍一を演じた中島が、『グッド・ストライプス』で映画初主演を果たした。役柄は、流れで結婚を決めた優柔不断な男子だ。

 マンネリ状態だった彼女の緑(菊池亜希子)が妊娠したため、そのまま結婚することにした真生(まお)役で、新たな顔を見せる中島。前半の真生は何を考えているのか分らず、正直、イライラしたと伝えると、彼も「いや、ホント。僕も最初に脚本を読んだとき、なんなんだ、こいつ。って思いました」と頷く。

 「まったく共感できなかったですね。結婚を決めるシーンでも、緑に“結婚する?”って訊ねる感じだったり。はぁ?って思いましたけど、でもそれが自分と真生との距離ですし、その距離を埋めることが、真生を理解する上で必要な作業になってくるので、監督とかなり話し合いました。それから菊池さんとのコミュニケーションをしっかりとるようにしました」と振り返る。

 緑との関係だけでなく、真生を理解する確かなパーツとなったのが、父親との関係だった。「真生は小さな頃に両親が離婚しているんです。僕には父がいますが、真生を理解するために、もし自分が真生と同じ立場だったらと考えました。その際、父親がいない時間をイメージするよりも、一緒にいた時間をイメージして、それが失われたことを思ったほうが実感として落としやすかった。小さな頃に父親とどんな思い出があったのか、具体的に想像しました」。
 

 本編では、後半、父親とのエピソードが重要になる。そこで、真生と緑、また観客との距離が一致に縮まっていく。

 「あの場面では、僕ではなく、真生として感情が沸き上がりました。俳優として大切な経験ができたと思っています。あっと驚くようなストーリー展開で見せる作品ではないですし、最初は不安もありましたが、作品を観て、ひとつひとつのやりとりにおもしろみを感じられました。随所にユーモアが感じられたのも発見でしたね」と話す中島。ちなみに中島自身にとって結婚は「あまりにも遠い壮大なスケールのもの(笑)」だそうだが、「恥ずかしいと感じることが一緒の人が理想」とのこと。

 さて、俳優デビューから2年あまりの中島にとって、やはり美輪の存在は大きい。13年の『黒蜥蜴』の稽古時には「“どうにもならないから、ほかの子いない?”と、降ろされる直前まで行った」こともあったと明かす。しかしそのことで、「自分でも見たことのないような本気が出せたんです。今まで本気だと思っていた域を越えることができるんだということを、美輪さんから教わりました」と感謝する。

 また美輪といえば、『花子とアン』のナレーションでも話題を集めたが、中島の演じた宮本も好評を博した。さぞや周囲の反響もすごく、環境も変化しただろうと思いきや、「友達や親せきから、ちやほやされるようになったくらいですね」とサラリとかわす。中島の飛躍は、始まったばかりだ。



『花子とアン』中島歩、美輪明宏に感謝 「降板直前まで行った」初舞台秘話を告白 - 映画 - ニュース - クランクイン!