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月に1度は必ず美輪明宏さんと顔を合わせることがある。社会面のコラム「美輪の色メガネ」(毎月第1週土曜日掲載)の打ち合わせだ。私はその時、折角の機会なので時間の許す限り、思いつくままにいろいろな話をうかがうことにしている。先日は、ふとしたことがきっかけで、「会社員の生き方」についての話題になった。

 「どこの会社でもそうですけど、善良な人、いい人ねって回りから言われている方はほとんど出世しないのね。“あいつは嫌な奴だ”と周囲から嫌われる人間じゃないと組織の中では生き残れないのよ。出世することと仕事が出来る出来ないは全く関係ないの」

 この言葉に、なるほど、然り。思わず納得!?なんて。人格的にも優れ、才能豊かでテキパキと仕事をこなし、後輩たちから「理想の上司」と期待されている人ほど、社内の出世レースから取り残されやすい。そればかりか、逆に嫉妬され「出る杭は打たれる」で冷遇されたりするという。

 その理由は、ミワさまいわく「根が悪い人の方が欲深くて世俗的な物事に対するエネルギーが強いからなのね。いつも他人を蹴落としてでも自分だけ生き残ってやろうと考えているからでしょう。性格のいい人は、どんな時でも“お先にどうぞ”でしょ。何事にも淡泊なんですよ。その違いでしょうね」。

 「憎まれっ子世にはばかる」とは、よく言ったものだ。しかし、ここからが要注意!。自分が自分がと出しゃばる人間に限って往々にして仕事は二の次、いつも上役の顔色ばかりをうかがっているヒラメのような輩が多いという。そして、最悪なことに、「類は友を呼ぶ」。その手の人間は必ず自分と同じようなタイプの部下を集め、お山の大将になって徒党を組んで行動するようになるそうだ。

 「会社をダメにしているのは、実はこういう人たちです。そうなると必ず会社が傾きます。でも本人たちは全く気がついてないのね。だからたちが悪い。それを防ぐには、トップに立つ人がゴマすりに惑わされず、有能な人材をきちんと見極めて適材適所に登用すること」

 きっと、今、このコラムを読んでいるみなさんの中にも、「うちの会社のこと?」なんて思い当たるふしがある人も多いはず。まあ、もっともこれは会社だけの話ではありません。あらゆる組織、そう、どこかの国の政治にも同じことが言えそう。時に我欲に走る議員たちが大臣ポストばかりを気にして、目茶苦茶な安保法制を推し進める総裁を無投票で再選してしまうとか。

 みなさん、いずこも同じ秋の夕暮れを感じませんか?

出典:美輪明宏が語る「会社員の生き方」 善良な人は出世しない、でも… ― スポニチ Sponichi Annex 芸能