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東京都渋谷区などが今年、同性カップルに結婚相当の関係を認める証明書の発行を決めたことで、LGBT(性的マイノリティー)の結婚への関心が高まっている。国内で同性婚は認められていないが、「人生の一大イベントを諦めてほしくない」とLGBTカップルの結婚式や披露宴を執り行う業者も増えてきた。

 ●「みんな平等に」

 康介さん(40)=仮名=と会社員の佳奈子さん(34)は昨年11月、横浜市内のチャペルで両親や友人らを招いて結婚式を挙げた。LGBTのシンボルカラーである虹色のリボンを振って祝福する参列者の間を二人が腕を組み、満面の笑みで歩いた。ウエディングドレス姿の佳奈子さんとタキシード姿の康介さんは、一見、男女のカップルだ。だが、康介さんは、体は女性だが心は男性で、心身の性別が一致せず、戸籍上は女性。そのため法律婚はできず、挙式も半分諦めていたという。

 それでも「自分たちの幸せの形を親に見てもらいたい」と式へのこだわりがあった。LGBTの生活支援を手掛ける「Letibee(レティビー)」(東京都品川区)の紹介で、理解のある式場と出合った。式場を運営する「ブライダルプロデュース」(横浜市)の担当者は「もともと結婚式はオーダーメードなので、性別は意識せず、どうすれば二人の希望がかなうかを一緒に考えた」と話す。今年5月には別の女性カップルも式を挙げた。

 レティビーは昨年4月の会社設立以来、LGBTに協力的な式場を開拓している。現在は首都圏の数社と提携。その一つ、「八芳園」(東京都港区)も「すべての人に平等に結婚式を挙げてもらいたい」とし、衣装はドレス2着でもタキシード2着でも組み合わせ自由だ。これまでに男性カップル1組が式を挙げた。

 式場側には、「新郎新婦」に代わる呼び方の工夫や、トイレや更衣室への配慮のほか、二人の門出を複雑な思いで見ている親族のケアも求められる。親子の距離を縮めるような演出も必要だ。

 康介さんの両親は式の間ずっとうつむいていたが、披露宴で康介さんが感謝の手紙を読み上げると、式後に「なんとなく分かった」と応じたという。「法律婚ができないからこそ、式がけじめになり、親も納得してくれた」と二人は声をそろえる。

 一方、宗教上の理由で式の内容を変更しなければならないこともある。男女のカップルと同じ手順を踏みたいという希望に沿うため、各式場ではウエディングプランナーらが知恵を絞っている。ホテルグランヴィア京都(京都市下京区)では昨年からLGBT向けに仏教の寺院と提携した結婚式プランを設定し、既に2組が利用した。

 ●イベントも盛況

 季刊誌の結婚情報誌「ゼクシィプレミア」では、2012年8月発売号から毎号でLGBTカップルの結婚式を紹介しており、読者の関心も高いという。今年3月に同誌が協力して開かれたLGBT向けのイベントは、約70人が訪れる盛況ぶりだった。

 パーティー会場を利用する方法もある。団体職員の恩田夏絵さん(29)と室井舞花さん(28)は2年前、東京都庁の展望レストランを借り切り、親族や友人らを招いて挙式した。会場スタッフには同性婚であることを伝えたが、特に驚かれなかったという。難航したのが衣装。「女性的なドレスにもタキシードにも抵抗がある」という室井さんの要望を取り入れるため、何度もデザイナーと相談して決めた。

 恩田さんは「式に参列した人が『すてきだった』『思っていたより普通で驚いた』と言ってくれた。結婚式がLGBTのポジティブなイメージにつながればうれしい」と話す。

 一方、レティビー代表の林康紀さん(24)は現状をこう見ている。「親や友人に隠している人が多く、結婚式や披露宴を諦めているカップルはまだまだ多い。LGBTが生きづらさを感じないような社会になることが大切」


出典:くらしナビ・ライフスタイル:LGBT、結婚式がけじめ - 毎日新聞