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夜の東京・歌舞伎町新宿区)で俳句を詠む人たちがいる。季語や五七五などの定型にはあまりとらわれない。直感に任せた自由な言葉を紡ぎ、参加者が次々と意見を言い合う。アウトローな句会のルールだ。そこで生まれる文字に込められた思いとは――。

 2月中旬、日付が変わった午前0時半過ぎ。小さな居酒屋が立ち並ぶ一角。3階のバーの屋根裏部屋から声がもれてくる。アートサロン「砂の城」という8畳もない空間に、20~60代の男女7、8人が車座になっていた。

 俳句のお題は「欲(よく)」。15分間で、思いつくだけ句をつくる。配られたコピー用紙の短冊に句を書き、コンビニのポリ袋に放り込んでいく。1人が句を声に出して読み上げると、「リズムがよくないね」「別の言葉のほうが破壊力がある」。自由な発言が飛び交う。

 〈機嫌良く梅酒ばかりが並ぶ卓〉

 元ホストの30代の男性が「女子」をイメージして詠んだという。自らも焼酎を片手に、「お酒を飲んでしゃべる感覚だが、これが美しい酒の飲み方だ」。これまでに詠んだ句の数は覚えていないが、ルーズリーフに清書してすべて残している。

 句会は不定期に開かれている。束ねるのは俳人の北大路翼さん(37)。俳誌「街」に同人として参加。普段は会社員で、仕事の後、ほぼ毎晩酒を飲みながら俳句を詠んでいる。ツイッターで参加者を呼びかけ、この部屋には学生、衣服の仕立屋、開業医、美術家など様々な肩書の男女が集う。


出典:夜の歌舞伎町、アウトロー句会 元ホスト・女装者ら集う:朝日新聞デジタル