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映画『タンジェリン』は体当たりで生きている人々を体当たりで撮ったタフな"ガールズ"ムービー。

LAの一角にあるドーナツ店で、刑務所から出て来たばかりのトランスジェンダーの娼婦、シンディは、親友のアレクサンドラから聞き捨てならない話を聞く。どうもシンディの留守中に彼氏が金髪女と浮気をしたらしい。浮気相手を見つけ出してヤキを入れようと、街に飛び出すシンディ。歌手になることを夢見るアレクサンドラは、夜に予定している自分のライヴのことを心配しながらもシンディを追いかける。そして、二人にとって大変なクリスマスの一日が始まった。


(C) 2015 TANGERINE FILMS, LLC ALL RIGHTS RESERVED





USインディ界の新鋭、ショーン・ベイカー監督の新作『タンジェリン』は、トランスジェンダーの娼婦たちの日常をリアルに描き出す。そのためにベイカーは、映画の舞台となった悪名高い風俗地帯で知り合ったトランスジェンダー、キタナ・キキ・ロドリゲスとマイヤ・テイラーをヒロインにキャスティング。彼女たちから聞き取り調査をしながらストーリーを膨らませていった。さらに映画に臨場感を与えているのが、スマートフォンで撮影した映像だ。どんな場所でも手軽に、長時間に渡って撮影ができて、カメラを向けても演技初体験のキタナとマイヤにプレッシャーを与えない。そんな映画の題材にはピッタリな道具を使うことで、街の空気や登場人物たちの息づかいがリアルに伝わってくる。


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そんななか、ベイカーはシンディが巻き起こす騒動を通じてLAの隠れた横顔を明らかにしつつ、そこにアルメニア移民のタクシードライバーのエピソードも絡めて、路上にひしめくマイノリティの群像劇を力強く描き出していく。ロマンティックな雪も降らないし、感動の奇跡も起こらないシケたクリスマス。疲れ果てたシンディとアレクサンドラが最後に見せた友情が、クリスマスツリーのように輝いている。『タンジェリン』は、体当たりで生きている人々を体当たりで撮ったタフな"ガールズ"ムービーだ。




『タンジェリン』
監督:ショーン・ベイカー
出演:キタナ・キキ・ロドリゲス、マイヤ・テイラーほか
1月28日(土)より、渋谷シアター・イメージフォーラムほか順次公開中
http://www.tangerinefilm.jp/


出典:映画『タンジェリン』:全編スマホで撮影したトランスジェンダーのタフなドラマ | Rolling Stone(ローリングストーン) 日本版