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2015年12月29日から31日にかけて東京ビッグサイトにて開催された同人誌即売会「コミックマーケット89」にて頒布された、サークル・Actress-Actorの新刊コスプレ写真集『GIRLY ROCKER』。

新進気鋭のアイドルとして活躍する『アイカツ!』のキャラクター・音城セイラを独占取材した音楽雑誌の別冊付録という設定で、その世界観をリアルに楽しむことができるユニークな作品に仕上がっている。

音城セイラに扮しているのは、『アイドルマスター』『艦隊これくしょん〜艦これ〜』といったさまざまな女性キャラクターの美麗なコスプレで注目を集める男性コスプレイヤー・ののみーさんだ。

そのビジュアルや撮影技術はもちろん、CG技術を駆使したハイクオリティな作品を生み出してきた彼が完成を目指す「コスプレグラフィックス」の理想形とは何なのか?

その思いが垣間見える『GIRLY ROCKER』の内容を紐解くとともに、ののみーさんへの独占インタビューを掲載。本作の制作秘話や、コスプレにかける思いについてうかがった。

女性キャラクターのコスプレをはじめたきっかけは?

ののみーさん

ののみーさん(「コミックマーケット89」会場にて)

──そもそも、ののみーさんが女性キャラクターのコスプレをはじめたきっかけとは何だったのでしょうか?

ののみー 人の勧めです。大学生のときにサークルの皆でネタのつもりで出店したコスプレ喫茶が思いの外好評で、あるお客さんに「あなたはメイクしたら絶対可愛いから今度コミケに来なさい、メイクは任せてほしい」といったお言葉をいただき、言われるままコミケにコスプレ参加したのがきっかけでした。

最初こそ言われるままにコスプレしただけでしたが、そのうち自分の参加する同人サークルでのコスプレ売り子をしたりする中で、男性であっても女性キャラクターの表現は可能なのだということを、作品表現を通じて示していきたいと思うようになり、今のような活動スタイルになりました。

──なるほど! そして段々とコスプレに魅了されていったんですね。女性キャラクターのコスプレをするにあたって、普段から心がけていることはございますか?

ののみー 体型管理です。男性と女性の身体はあらゆる部分で無視できないレベルの差異が存在するので、男性のありのままの身体で女性キャラクターのコスプレをすると、どうしても無理をしている印象が出てしまいます。

また、コスプレは人々がキャラクターに対して抱く夢を現実世界で背負う側面が強く、あまりいい加減なコスプレをしてしまうと、たちまち嫌悪の対象となってしまいます。

ですから、私の場合であれば、食事制限と適度な筋力トレーニングによって、男性の身体で女性の身体の細さやしなやかさを表現できるように普段から心がけています。

コスプレイヤーを名乗るようになってから、一度たりとも体型を崩したことがない(キャラクターによって筋肉量の調整はすることがありますが)のがちょっとした自慢です。

2次元の世界観をリアルに表現するためには?

『GIRLY ROCKER』1

3DCGをふんだんに活用したライブシーン

──今回の新刊をつくる上で1番苦労したことは何でしょうか?

ののみー リアリティの表現です。今回の作品は「2次元世界の出来事を、現実世界の出来事に」というコンセプトで制作しているのですが、それは、アニメ内の出来事やビジュアルを、そっくりそのまま再現すればよいというわけではありません。単なる再現を越えたリアリティを表現するには、現実世界とのバランスを取る必要があります。

本作品では、登場人物のインタビューシーンやギターの紹介ページで、現実世界の音楽雑誌の構成やデザインにかなり寄せた雰囲気づくりをしました。

また、ライブシーンについても、アニメに登場するステージやエフェクトをより実写寄りの立体感や質感となるようにアレンジした上で3DCGによる再現を行う、といった試みを行っています。

こうした試みを成功させるためには、コンセプトをチームメンバーでしっかりと共有した上で、具体的な完成形を綿密な打ち合わせによって調整していかねばならないため、苦労も大きかったです。

『GIRLY ROCKER』2

音城セイラの愛用するギターの紹介文や、インタビュー風の文章なども掲載

──お疲れ様でした……! そんな新刊についてのコミケやSNSでの反響はいかがでしたか?

ののみー 今回は新刊そのものについてはもちろん、そこに登場する衣装の完成度についてもリアクションをたくさんいただくことができました。

コスプレ同人シーンとしては『アイカツ!』ジャンルは極めて小さく、そもそも『アイカツ!』という作品を知らない方が作品をご覧になる機会も多いです。

そんな中でも、「『アイカツ!』自体は知らないがこの衣装の出来は素晴らしい」と褒めていただくことが多く、衣装だけで1年かけて制作した甲斐があったなあと感じています。

ひとりのキャラクターとして物語を表現する

『GIRLY ROCKER』3
──今回でしばらくコミケに合わせた作品制作は休止されるとのことですが、今後挑戦してみたいことはございますか?

ののみー 物語の表現です。コスプレ写真は、基本的に1枚絵としていかに綺麗でドラマチックなものをつくるか、ということに重きを置かれる印象があり、実際自分もそういった要素はかなり大切にしてきました。

しかし、画的な美しさは突き詰めていけばいずれ頭打ちになるタイミングが来ると思っています。そこで、画的な美しさは一定程度確保されていることを前提として、一連のコスプレグラフィックによる物語の表現というものに挑戦していきたいと思っています。

コミケに合わせた作品制作についても、1年以上前から水面下で進めている企画などは引き続き進めていくつもりなので、また良いタイミングを見計らって(休止期間を挟んで)その挑戦の結果をご覧に入れられると思います。

──最後に、ののみーさんの掲げる「コスプレグラフィックス」の理想の完成形とはどのようなものでしょうか?

ののみー 見る人が「画の中にいる人物が、キャラクターそのものである」と認識できるようなものだと思っています。

コスプレは現実世界の人間をベースにして行われるものである以上、どうしてもコスプレをする人物主体のルックスや振る舞いにキャラクターが引っ張られてしまいがちです。

ですが、コスプレグラフィックスはあくまで「キャラクターそのもの」を重要視しています。

ですから、なるべく「演者が誰であるか」を見ている人の意識に上らせないような画をつくることが私の思う理想の完成形です。

もっとも、演者の個性を前面に出すことで作品の完成度を高める例が非常に多いことも確かなので、これは私の好みによるところが大きい話ではあります。

──ありがとうございました。今後の活動にも期待しています!

『GIRLY ROCKER』4
新刊『GIRLY ROCKER』は、Actress-Actorのオンラインショップでの販売も予定しているとのことなので、コミックマーケット会場でゲットできなかったという方も要チェックだ。

出典:美しすぎる男の娘レイヤー「ののみー」インタビュー コスプレグラフィックスという表現