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■多様な性当然の社会に 「思春期の苦悩から解放を」

 LGBTなど性的少数者が、自分らしく生きられる社会を目指した活動が広がっている。佐賀県内でも支援団体「アオ・アクア」が昨年2月に発足、この1年間、当事者同士の交流や学校現場への啓発などに取り組んできた。代表の佐賀市の看護学生原亮さん(20)は、思春期に「自分が何者か」と一人で悩み続けてきた経験から、「多様な性があることをたくさんの人に知ってほしい」と話す。

 原さんは心と体の性が一致しないトランスジェンダー。幼いころから「女の子」であることに強い違和感を抱いてきた。遊び相手は男の子ばかりで、一人称は「俺」。胸が膨らみだすと、大きくならないようにうつぶせになって寝た。

 中学、高校とセーラー服を着るのが苦痛でならなかった。しかし、誰にも相談できず、スカートの下に短パンをはいて通学した。高校1年の時、インターネットでトランスジェンダーのことを知り、「自分が何者か分かり、すっきりした」。ただそれは、自らが背負う厳しい現実を知ることでもあった。

 広告代理店の電通が昨年、全国7万人を対象にした調査では、13人に1人(7・6%)がLGBTに該当。一方、2013年の民間団体の調査では、LGBTの7割が学校生活でいじめや暴力を経験。被害者の半数は誰にも相談できず、4割は自殺を考えたという。

 原さんは、男装用の下着を持っていることが親に見つかったのを機に、家族にカミングアウトした。反応は予想以上に厳しく、「頭がおかしい」などの言葉を浴びせられ、深く悲しんだ。それでも、福岡のLGBT交流会に参加して仲間ができ、SNS(会員制交流サイト)を通じて全国の人に相談することができた。

 2年前、高校を卒業してすぐ、佐賀市内で交流会を企画すると、県内外から当事者ら10人が集まった。交流を重ねた後、社会に向けて活動の幅を広げようと支援団体を立ち上げた。

 原さんがそうであったように、性的少数者は思春期に一番苦しい思いをする人が多い。そのため、学校への啓発活動に力を入れ、チラシを作って校内の掲示板に張ってもらったり、教員の研修会のテーマに取り上げてもらったりしている。昨年11月には、佐賀女子短大でトランスジェンダーの卒業生による講演会を開いた。

 運営スタッフは現在、原さんと大学生の宮崎ちりさん(20)の2人。ともに学業を抱え、時間と資金は限られているが、「多様な性を認めようという社会の意識は少しずつ高まっている。LGBTが支援の対象じゃなく、当たり前の存在になるまで、活動を続けていきたい」と話す。

問い合わせは「アオ・アクア」のホームページ(http://aoaqua-niji.jimdo.com)から受け付けている。

■LGBT 同性愛のレズビアン(L)とゲイ(G)、両性愛のバイセクシュアル(B)、心と体の性が一致しないトランスジェンダー(T)の頭文字をつなげた性的少数者の総称の一つ。それぞれの性的な特徴を肯定的に表す言葉として欧米で使われ始め、日本でも浸透してきた。


出典:「アオ・アクア」発足1年 活動広がる|佐賀新聞LiVE