好きな人と結婚できず、一緒のお墓に入れない――。こうしたLGBTの人々の悩みに応えるべく、江戸川区の證大寺(しょうだいじ 浄土真宗)が動き出した。
證大寺は、2月9日に当事者と僧侶らによる座談会を開催。寺院は今後、LGBT問題にどのように向き合えばいいのか、当事者と僧侶の間で意見交換が行われた。
「これまで『どうせ好きな人と一緒のお墓には入れない』と思っていました」
当日、20人ほどの当事者と十数人の僧侶・職員が證大寺の銀座道場に集まった。参加者たちは3つのグループに分かれてテーブルを囲み、お茶やお菓子を味わいながら議論を交わした。
座談会の冒頭、證大寺のスタッフからお墓の現状が説明された。やはり現状では、籍を入れていないと一緒のお墓に入るのは難しいという。こうしたことの背景には、「お墓は家で継承していくもの」という伝統があるという。
證大寺では、入籍していないとお墓に一緒に入れないという現状を変えようと、お墓に入る2人の性別・国籍・宗派や間柄を一切問わない、新しいお墓「&(安堵)」を作った。デザインも特徴的で円柱形の墓石に2人の俗名、没年月日、行年を彫刻する。
LGBT研修などを行うレティビーの代表取締役、榎本悠里香さんは、と、こうした新しい取り組みを歓迎しているようだ。
参加者のゲイ男性からは「お寺には男女のカップルを想定した案内が多いのではないか」という意見が出された。
永代供養墓に同性同士の申し込みがあったのがきっかけ
證大寺がLGBT問題に取り組む背景には、「お寺も現代化していく必要がある」という思いがあるという。證大寺のスタッフは次のように語っていた。LGBTの人々への差別が社会問題化するなかで、お寺もこうした「新しい」問題に取り組んでいく必要があるということだろう。また、永代供養墓に友人同士で申し込む人がいたこともきっかけになったという。「仏教には男女の差別はありませんし、お寺は多様な方々に門戸を開いています」
座談会終了後、證大寺の20世住職である井上城治さんは、「寺は様々な人に向け、門戸を開いているということをもっと知ってほしい」と語った。
近年、ダイバーシティの重要性が謳われ、一部の企業や自治体ではLGBTへの差別が改善されつつある。しかし依然として、社会には偏見も残っており、寺院にはお墓などの問題もある。今後、こうした差別が解消に向かうことを願うばかりだ。
出典:ゲイやレズビアンでも恋人と一緒にお墓に入れる 證大寺がLGBTへの対応を本格化