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タグ:同性婚

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この度、タレント・一ノ瀬文香さん初の著書『ビアン婚。~私が女性と、結婚式を挙げるまで~』が2月19日に双葉社より刊行されます。
2009年にレズビアンであることを公表した著者が、幼少期から、性の目覚め、女性同士の恋愛事情、ADHD(注意欠陥多動性障がい)と診断された事実、週刊誌でのカミングアウト、そして現在のパートナー・杉森茜さんと結婚式を挙げるまでの半生が綴られています。LGBTへの関心も高まる今、注目の1冊です。

書影

 

【書籍概要】

自信が持てずにいるLGBTの人たちにメッセージを届けたい!

その思いから本書を綴ることを決意した著者。“女性らしさ”を求められることに違和感を覚えた子供時代、リスクを恐れず週刊誌でレズビアンであることをカミングアウトしたこと、そして同性結婚式を成し遂げるまで。数々の困難を乗り越えてきた著者の半生は、LGBT当事者だけではなく日本中のすべての人に勇気を与える物語になっています。

【章立て】
序章:ささやかな幸せ/第1章:孤独/第2章:性の目覚め/第3章:新宿二丁目での出会い/第4章:空虚/第5章:愛を知る/第6章:決心/第7章:運命の出会い/第8章:最高にハッピーな日/終章:これからの二人


●書名:ビアン婚。~私が女性と、結婚式を挙げるまで~
●定  価:本体1300円+税
●体  裁:四六判・192ページ
●発売日:2016年2月19日
●発行元:双葉社 http://www.futabasha.co.jp/

―同性カップルが結婚するということが、特別なことではなく、ごく普通のことになってほしい。(本文より)―

【著者 プロフィール】 一ノ瀬文香(いちのせ あやか)
1980年生まれ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。タレント・コメンテーターとして活動。2009年週刊誌でレズビアンであることをカミングアウト。2015年女優兼ダンサーの杉森茜さんと挙式。LGBTや自身をテーマに、講演やトークイベントに多数出演。ネットサイト『恋愛.jp』にてコラム連載中。
ビアン婚。 私が女性と、結婚式を挙げるまで[本/雑誌] / 一ノ瀬文香/著
ビアン婚。 私が女性と、結婚式を挙げるまで[本/雑誌] / 一ノ瀬文香/著

出典:LGBTの著者が綴る、女性同士の恋愛や同性婚とは|株式会社双葉社のプレスリリース

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民間企業にも広がるLGBT配慮の取り組み

 東京都の渋谷区と世田谷区が、同性カップルに「結婚に相当する関係」を証明する公的な文書の発行を始めた。兵庫県宝塚市も今年6月から証明書を発行する予定で、性的少数者(LGBT)に配慮する取り組みが始まっている。こうした動きを受けて、民間企業にも同性カップルの結婚式を提案する結婚式場や、社内制度を改めて結婚祝い金を出す企業も出てきた。

     LGBTは、「レズビアン(女性同性愛者)」、「ゲイ(男性同性愛者)」、「バイセクシュアル(両性愛者)」、「トランスジェンダー(心と体の性の不一致)」の頭文字をとったものだ。同性カップルが求めている同性婚は、男性同士、女性同士の結婚で、国際的には2001年に世界で初めてオランダで合法化された。欧州や米国を中心に合法化、または男女間の夫婦と同等の法的権利を与えるパートナーシップ制度を導入する国や自治体が増えている。一方で、中東やアフリカには同性愛が刑罰の対象となる国もある。

     米国では昨年6月26日、連邦最高裁判所が同性婚を合憲とし、州法で禁じることを違憲とする歴史的な判決を下した。広告代理店の電通が昨年実施した調査によると、日本では人口の7.6%が同性愛者や両性愛者などの性的少数派に属しているという。これは人口比でほぼ13人に1人ということになる。

     渋谷区は証明書の発行を条例で定めた。同性カップルを「結婚に相当する関係」(パートナーシップ)と認め、証明書を発行する。昨年11月5日には増原裕子さん(37)と東小雪さん(30)に最初の証明書を交付した。自治体が同性同士の「結婚に相当する関係」を証明する全国で最初の事例となった。

     宣誓書を提出した同性カップルを「結婚に相当する関係」と認め、宣誓書の受領証を発行する制度を創設したのは世田谷区だ。同区も同日、パートナーシップの宣誓をした7組のカップルに受領証を交付し、渋谷区に続いて2番目の導入となった。渋谷区が証明書の発行を条例化したのに対し、世田谷区は「要綱」を作って制度に対応した。11月5日受領証を受け取り、会見した手話講師の高野幸子さん(44)と宣誓した手話通訳士の高島由美子さん(45)は「耳の聞こえない人たちにもLGBTはいる。ろう者の間でも理解が深まればいい」と語った。

     保坂展人世田谷区長は「今日ははじめの小さな一歩。その波紋はきっと全国の市町村に広がり、やがては国の法改正の議論につながると信じる」と話した。

     さらに昨年11月30日に、申請があれば同性カップルの関係を証明する文書を発行するため、要綱を定めると発表したのは宝塚市だ。15年度中に定め今年6月からの発行を目指すという。同市によると、同性カップルが市職員の前で宣誓書に署名し、同市は「パートナーシップ宣誓書受領証」と宣誓書の写しを交付するという。中川智子市長は「宣誓したカップルが市営住宅に入居できるようにしたい。国には同性婚を認める立法措置を求めたい」と話し理解を示した。また、横浜市もLGBTからの聞き取りを通じ、具体的な支援を検討する方針を決めている。

     行政的に配慮する取り組みもある。大阪市淀川区は13年9月1日に、「同性愛や性的少数者に配慮した行政を目指す」という「LGBT宣言」を出している。これに続いたのが、昨年7月に「性の多様性を尊重する都市・なは(通称・レインボーなは)」を宣言した那覇市だ。同市は、同性カップルの「パートナーシップ」に関する施策の導入に向け検討を始めた。証明書の発行など、パートナーシップ制度を導入した沖縄県外の先進自治体などを視察し調査を進めるという。

     同性同士の結婚について、国民の理解はどの程度進んでいるのだろうか。国立社会保障・人口問題研究所の研究グループは昨年11月、同性同士の結婚の法制化について「賛成」「やや賛成」の人の割合が51.1%に上ったとの調査結果を公表した。調査は昨年3月、全国で無作為に選んだ20〜79歳の男女2600人を対象に行い、1259人から回答を得た。回答の内訳は「賛成」が14.7%、「やや賛成」が36.4%あった。これに対して「やや反対」は25.4%、「反対」15.9%だった。男女別でみると、賛成とやや賛成の割合は女性の方が多くて56.7%、男性は44.8%だった。

     国内の同性カップルたちは声を上げており、昨年7月8日には、同性婚を望む当事者455人が日本で同性同士の法律婚が認められないのは人権を保障した憲法に反するとして、 日本弁護士連合会に対し人権救済を申し立てた。調査の上、首相や法相、衆参両院に同性婚の法制度を作るよう勧告を求めた。申し立て後の記者会見で、山下敏雅・弁護団長は「日本でこれだけの当事者が集まり、声を上げたのは初めて。一刻も早く適切な判断を要望したい」と訴えた。

     渋谷区や世田谷区の制度化を機に、民間企業もさまざまな取り組みをみせている。全国で結婚式場などを運営している「ブライダルプロデュース」(本社・横浜市)は昨年11月から、同性婚の支援を目的としたキャンペーンを始めた。渋谷、世田谷両区の証明書を受領したカップルの中から抽選で1組に、挙式料(約70万円相当)をプレゼントする。LGBT向けサービスで新規市場の開拓を図りたいとしている。

     第一生命保険も渋谷区発行の証明書で、生命保険の受取人に同性のパートナーを指定できるようにした。ライフネット生命保険も死亡保険金受取人の指定範囲を拡大し、昨年11月から異性間の事実婚に準じる「同性のパートナー」も受取人に指定できると発表した。

     社内制度を見直す企業もある。日本IBMや日本マイクロソフトは、結婚祝い金や休暇制度を同性婚に適用した。携帯電話のNTTドコモやソフトバンク、KDDIは同性カップルを家族割引の対象に加えた。また第一生命保険やイオン、野村ホールディングスはLGBTに関する社内研修を始めている。


    出典:毎日フォーラム・ファイル:同性婚 自治体が「結婚相当」の証明書 - 毎日新聞

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    2015年6月26日は歴史に刻まれる1日となった。アメリカ合衆国連邦最高裁判所は、同性カップルが結婚する権利はアメリカ憲法で保障され、これを禁止する法律は違憲だと判断した。この判決によって、アメリカ全土で同性婚が認められることになったのだ。日本でも、4月には渋谷区、7月には世田谷区で「同性パートナーシップ条例」が制定され、同性婚への歩みは着実に進みつつある。世界中で、社会の片隅に追いやられていたLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略称)たちの権利や制度的な受け皿が拡大しているのだ。

    そんな状況のなか、ダンサーの川口隆夫が同性愛という自らのアイデンティティーに向き合った作品『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』を上演する。LGBTの権利拡大が進む中、当事者として川口はどのような心境なのだろうか? そしていま、同性愛というセクシャリティーに向き合うことで、いったいなにを提示しようとしているのだろうか? 川口と、今作のドラマトゥルクを務める飯名尚人との対談からは、必ずしも「同性婚バンザイ!」だけには終わらない複雑な事情が見えてきた。

    パブリックな存在としてゲイが世間に出ていこうとすると、風当たりはとたんに強くなる。(川口)

    ―川口さんは、ダンサーとして活躍する傍ら『東京国際レズビアン&ゲイ映画祭』(以下『L&G映画祭』)のディレクターを務めるなど、ゲイカルチャーとも密接に関わりながら活動されてきました。最近は、日本でも同性婚のニュースが話題ですが、LGBTを取り巻く状況についてどのように感じていますか?

    川口:「ゲイカルチャー」と一括りにはできませんが、ぼくが見てきた範囲で言えば、『L&G映画祭』がはじめて開催された1992年ごろから、オープンに花開いていった印象があります。時代的にも、いまより景気が良くて、派手なパーティーがあったり、企業から協賛をもらったり、それらに付随して予算規模の大きなゲイフィルムも作れるようになった。世界的な傾向として、ゲイコミュニティーの潜在力が評価され、社会が受け入れるようになっていった時期でした。

    左から:川口隆夫、飯名尚人左から:川口隆夫、飯名尚人

    ―1990年代を通して、ゲイカルチャーは拡大していったんですね。

    川口:特に重要な転換点として、1995年にHIVの治療薬が開発されたことがあります。ゲイの解放運動は1980年代以降、HIVをめぐる戦いの歴史でもあったため、治療薬によってゲイコミュニティーは大きく盛り上がったんです。1990年代の追い風のなかで、一番印象的だった事件がパリのコンコルド広場で行われたエイズ感染者支援団体「ACTUP(アクトアップ)」による活動。パリのコンコルド広場にあるモニュメントを男根に見立て、大きなピンク色のコンドームを被せました。当時「ゲイがこんな風に社会に出ていけるんだ!」と感動した記憶があります。

    ―2000年代に入ってからはいかがでしょうか?

    川口:ここからが複雑なんですが……、私の見方では2000年代からゲイが保守化していったように感じています。

    ―クラブのパーティーやドラァグクイーンなどに象徴されるゲイカルチャーと「保守化」という言葉は、相容れないように感じますが……。

    川口:2000年代に入ると、それまで「周辺」の存在だったゲイが市民権を得たことで、ゲイカルチャーもメインストリーム化していきました。反体制、マイノリティーとして尖った活動をしていたアーティストも丸くなってしまい……。「同性婚」も各国で徐々に認められはじめ、そんな祝祭ムードのなか、ゲイも既存の社会制度に取り込まれていきました。結婚して、いい家に住んで、高級車に乗って、インテリアを揃えて、なんらかの方法で子どもを持って……と、絵に描いたように伝統的でラグジュアリーな「アメリカンファミリー」を実現していく流れが目立つようになってきたんです。

    川口隆夫

    ―ゲイは市民権を得た後、自分たちを既存の社会制度のなかに位置づけて「保守化」していった?

    川口:そう。だから同性婚の法制化も、ただ素直に歓迎していいものか? と悩ましく思うこともあります。それは、ゲイが「まっとうな市民」として受け入れられるために、それまで持っていた「汚れた部分」を隠しはじめたということでもあるんです。

    ―欧米と日本では、LGBTを取り巻く状況は異なり、市民権の獲得において、日本は遅れているイメージがありますが、実態としてはいかがでしょうか?

    川口:遅れているというか、「出る杭は打たれる」文化の日本では、同性愛は問題とすらされていなかったんです。大雑把な見立てですが、人の活動を「プライベート」と「パブリック」に分けた場合、日本の同性愛は「プライベート」に収めている限り、問題にはなりませんでした。江戸時代から「若衆、衆道、男色」というカルチャーはあったけれど、家制度を引き継いで、社会的なノルマをきちんと果たしていれば、セクシャルアイデンティティーというプライベート部分は問われなかった。けれども、パブリックな存在としてゲイが世間に出ていこうとすると、風当たりはとたんに強くなる。最近でもさまざまな反発が生まれていますよね。

    ―先日、神奈川県海老名市の市議会議員が、同性愛者に対して「生物の根底を変える異常動物だ」とツイートしたことが話題になりました。

    川口:制度的には、パブリックでもLGBTを受け入れる社会になりつつありますが、必ずしも楽観的ではありません。むしろ、そのようなツイートも起こりうる現実に対して強く警戒していますね。

     

    欧米の性風俗店は裏通りにこっそりありますが、日本では表通りに軒を連ねていて、むしろ性に対して寛容なのかもしれません。(飯名)

    ―スパイラルホールでまもなく上演される、川口さんの新作『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』に、ドラマトゥルクとして参加している飯名さんにとって、LGBTを取り巻く状況はどのように映っているのでしょうか?

    飯名:欧米が「先進的」で日本が「遅れている」というイメージに対しては、かなり慎重に向き合っていかなければと実感しました。今作のコンセプト・構成・演出を担当しているアメリカ人のジョナサン・M・ホールにはじめて会ったとき、「アメリカは性(セックス)についてオープンですよね?」と聞いたら、彼は「アメリカの性風俗店は裏通りにこっそりあるのに、日本では表通りに軒を連ねていて、日本のほうがもしかすると性に対して寛容でオープンなのでは?」と言われて、ハッとしました。

    飯名尚人

    ―欧米は、必ずしもLGBTに対して寛容な文化ばかりではない?

    飯名:ジョナサンが言うには「ゲイほど保守的な人たちはいない」と(笑)。同じゲイカルチャーだからといって、日本と欧米を同じ文脈で語ることはできないし、さまざまな様相を持つ「同性愛」という事象を、どういうかたちでどこから切り崩していくかは、しょっちゅう(川口)隆夫さんと議論していますね。これまでも長く仕事をしていますけど、ここまでお互いのアイデンティティーについて深く語り合うことはありませんでした。

    わかったつもりで「そうだよね」と相槌を打っていると、いつのまにかおかしな関係になってしまう。(飯名)

    ―川口さんは、以前から自らのアイデンティティーに関わる作品を創作していますが、観客からはどのような反応があるのでしょうか?

    川口:2000年に『世界の中心』という作品を上演したんですが、5人の出演者がたまたま全員ゲイだったんです。LGBTについて政治的なスローガンを掲げた作品ではなかったんですが、ヘテロ(異性愛者)のお客さんから「なぜ、ダンスでセクシャルアイデンティティーを問題にするの?」という質問があって、びっくりしたことを覚えています。

    『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』チラシ『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』チラシ

    ―出演者にゲイのパフォーマーを選ぶだけで、そこに政治的な意図があると思われてしまう。

    川口:おそらく、いまの社会はヘテロを中心に動いているので、ゲイが中心の作品を観ると、ふだん無意識にやり過ごしてきた「ヘテロ中心の世界」が覆される恐怖を感じるのではないでしょうか。自分が「異性愛者=マジョリティー」であることが相対化、視覚化されて、認めざるを得なくなる。それを嫌って抑圧しようとするから、同性愛者は社会の周辺に追いやられてしまうんです。

    ―異性愛者からのLGBTに対する無意識な抑圧が、「なぜ、ダンスでセクシャルアイデンティティーを問題にするの?」という質問に象徴されるわけですね。

    川口:ぼくも所属していたダムタイプの『S / N』(1992年)は、リーダーの故・古橋悌二が「私はゲイです」「日本人です」「男性です」「HIVポジティブです」と、自らにレッテルを貼りつけながら、セクシャリティーやアイデンティティー、HIVといった問題を突きつける作品でした。日本の舞台や映画の世界で、このように当事者が問題を扱っている作品は、いまだ圧倒的に少ないんです。映画監督では橋口亮輔さんや大木裕之さん、そして『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』で映像部分を撮影してくれた今泉浩一くんの作品くらいでしょうか。『L&G映画祭』でも、日本の作品を募集していたのですが、集まってくるのは同性愛者の監督作品よりも異性愛者の監督作品のほうがずっと多かった。

    ―「作品」というパブリックな場でセクシャルアイデンティティーを扱ったとたん、激しい抑圧に見舞われる。だから、日本でLGBTをテーマとした作品を作るのは難しい。

    川口:社会的な偏見は薄れつつあるし、テレビでも当たり前にゲイが登場するようになりました。LGBTという名称も普及し、渋谷区では「同性パートナーシップ条例」も施行されました。けれども、よくよく見ていくと、LGBTに対する抑圧はいまだに根強く残っているんです。

    川口隆夫

    飯名:「ストレートアライ」という言葉があります。「LGBTを受け入れて支援する異性愛者」という意味ですが、時にその人たちのLGBTに対する無自覚な接し方が、彼らを苛立たせることもあるんです。異性愛者がLGBTの気持ちをわかったつもりになってしまうと、いくら好意的に振る舞っても違和感が残ってしまう。今回のクリエイションを経て、ぼく自身もLGBTに対して無自覚であり、あまりにも知らないということに気づかされました。一緒に仕事をしていても、隆夫さんの言う「抑圧」がなにを指すのか、いまだにわからない部分もありますよ(笑)。

    川口:わかんないだろうなー(笑)。

    飯名:わかったつもりになってはいけない。わかったつもりで「そうだよね」「わかるよ」と相槌を打っていると、いつのまにかおかしな関係になってしまう。なにがわかって、なにがわからないのかを丁寧に自覚しなきゃならないんです。

     

    自分をゲイとしてアイデンティファイできていない。そんな宙づりの状態のときに集まれる場所が、パブリックとプライベートが交差する空間、公衆トイレなんです。(川口)

    ―『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』は、アメリカの社会学者ロード・ハンフリースが、公衆トイレにおける同性愛者の性行動をリサーチした博士論文『Tearoom Trade』(1970年)をベースに創作されたそうですが、これはどのような研究だったんでしょうか?

    川口:ジョナサンから教えてもらったんですが、この論文はアメリカの社会学では必ず取り上げられる、金字塔的な研究になっているそうです。なぜかというと、そのリサーチ手法が大胆すぎて、倫理的な問題があるんじゃないかということで……。

    『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』プレ公演 © 2015 Touch of the Other.『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』プレ公演 © 2015 Touch of the Other.

    ―ハンフリース自身も同性愛者だったんですか?

    川口:彼は牧師で妻帯者でしたが、のちに離婚してゲイだとカミングアウトしています。そのリサーチ手法というのが、ゲイのハッテン場(男性同性愛者の出会いの場所)である公衆トイレに見張り役として参加し、集まっている人たちの行動を詳細に記録したんです。さらに車のナンバープレートまで控えておいて、1年以上経ってから市の衛生局に健康調査員として潜り込み、公衆トイレに参加した人たちの住所を割り出して、身辺調査インタビューまで行なっています。クリエイティブだけど、むちゃくちゃなリサーチだったんですね(笑)。

    ―倫理だけでなく職権も濫用した、かなり問題のあるリサーチですね(笑)。

    川口:結果的には、この調査によって同性愛者たちの社会的身分や経済状況、じつは結婚して子どもがいたりなど、社会一般から思われているような害悪のある人たちではないことがわかりました。それが1970年代に進展していくゲイ解放運動の推進力の1つとなっていきます。ただ、「こんな研究が許されるのか」と、いまだに議論が分かれています。このリサーチでハンフリースは膨大な記録を残していますが、ここから45年を経たぼくらが共有しているリアリティーを、作品ではあぶり出したいと考えています。

    『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』プレ公演 © 2015 Touch of the Other.『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』プレ公演 © 2015 Touch of the Other.

    ―ちなみに、同性愛者たちの「ハッテン場」に、公衆トイレが使われるのは世界共通なのでしょうか?

    川口:異性愛者もLGBTも、性生活はプライベート空間で行なうことが規範とされていますが、ゲイにとって、その規範に収められない場合があるんです。「クローゼット」という言葉があるのですが、同性愛に気づいたけど、家族に話すこともできず、自分自身のアイデンティティーを隠して生きている状態。誰かと交わりを持ちたくても、まだ自分をゲイとしてアイデンティファイできていないから、ゲイバーに行くことはできません。そんな宙づりの状態のときに集まれる場所が、パブリックとプライベートが交差する空間、公衆トイレなんです。出会いの場がネットに移行する2000年代まで、世界的にそういう傾向にありました。

    ―これまでのゲイ解放運動のなかでも、公衆トイレのような「後ろめたい場所」で行われる性については、あまり光が当てられていませんでした。

    飯名:今作で映像を担当する今泉浩一監督は、日本でゲイの映画を作り続けている数少ない映画監督ですが、「あなたの作品はゲイのイメージを下げている」と批判されることもあるそうです。それは、今泉監督が描こうとする「本当のゲイの姿」を世間にさらさないでほしいということなのかもしれない。LGBTがマジョリティーを意識してイメージアップをしている、させられていることの表れかもしれません。

    川口:たとえば、「同性パートナーシップ条例」のニュースでテレビに出たり、脚光を浴びるのは、社会に認められた「シャイニー」なゲイやレズビアンの人々ですよね。だけど、シャイニーじゃない人のほうが多数派なのは、同性愛者も異性愛者も変わりません。同性婚によって「社会に認められたゲイ」が脚光を浴びることは、同時に「普通のゲイ」を周辺に押しやることにもつながってしまうんです。

    『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』プレ公演 © 2015 Touch of the Other.『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』プレ公演 © 2015 Touch of the Other.

    ―逆に言えば、公衆トイレにフォーカスすることで、ゲイが持っている「本当の姿」を描けるということでしょうか?

    川口:そうですね。渋谷区では、同性パートナーシップ条例施行の裏で、宮下公園の大規模整備によってホームレスたちを排除しようとしています。同性愛と異性愛という区別がなくなったとしても、「シャイニー」な人と「シャイニーじゃない人」という区別は残っていくんです。いまのLGBTの社会への受け入れられ方には疑問を感じている部分も多いので、そのイメージをいい意味で覆すような作品にしたいですね。

    公衆トイレでの経験を振り返ると、他者との接触を求めてつながろうとしているのに、自分がなにを求めているのかわからなかった。(川口)

    ―『TOUCH OF THE OTHER ―他者の手―』は、日本とロサンゼルスでプレ公演やレクチャーパフォーマンスを行なってきましたが、それぞれの反応はいかがでしたか?

    飯名:日本とアメリカで大きく反応が異なっていたように思います。日本ではゲイが上演するパフォーマンスということだけで、単純におもしろがられる傾向にあります。だけど、ロサンゼルスで上演したときは、一緒にクリエイションをしたレズビアンの映像作家から「ゲイの男根主義的作品」と批判されたんです。アメリカでは、ゲイのパフォーマンスということだけでなく、その質や中身を議論する歴史がありますが、日本はそこまでの段階に至っていないのかもしれません。

     川口:ただ、何回もプレゼンテーションやシーンの断片を上演していくなかで、日本でも興味を持たれてはじめている実感はあります。日本のLGBTを取り巻く状況に風穴を開けることを期待している人はきっと少なくないはずです。

    ―今作のチラシには、「小便器の前に立ち、知らない男に、握られて、果てる」と、川口さんによる新宿駅公衆トイレでの実体験が生々しく綴られています。『他者の手』というタイトルは、この知らない男の手を指すのでしょうか?

    川口:公衆トイレでの経験を振り返ると、他者との接触を通して、具体的に自分自身がなにを求めているのかわからなかった。そんな自分の「正体不明な欲望」を「他者の手」が象徴していると思ったんです。後ろめたさや罪悪感を感じつつも、背徳感がさらに自分の欲望を助長させてしまうんですね。

    飯名:後ろめたさや罪悪感を感じつつ欲望を助長するというのは、異性愛者でもマスターベーションの快楽をイメージすればわかりやすいと思います。今作には「どうしようもなくダークで切ない人間の本性」というコピーが綴られていますが、この「本性」という言葉はLGBTと異性愛者という境界だけでなく、恋愛、セックス、性欲、欲望といったさまざまな意味に捉えられるのではないでしょうか。


    出典:同性婚バンザイ!と言いきれない、保守化するゲイカルチャー事情 - インタビュー : CINRA.NET

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    「同性婚を認めないのは、憲法が定める法の下の平等に反する」

    同性カップルら455人が7月7日、日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済を申し立てた。申立人は、42都道府県や海外に暮らす、レズビアンやゲイなどのLGBT当事者だ。

    申し立てでは、政府や国会が同性婚を法制化するように日弁連が「勧告」することを求めた。「勧告」に強制力はないが、弁護団は国内初の同性婚訴訟につなげたい考えだ。

    この弁護団長を務めるのが、弁護士でLGBT支援法律家ネットワークのメンバーの山下敏雅(やました・としまさ)さんだ。「同性カップルの相続問題が、LGBTの問題に取り組む原点」と語る山下さんに、LGBTの法律トラブルや、同性婚の人権救済申し立ての意味について聞いた。


     ■LGBTの問題に取り組む原点、同性カップルとの出会い

    ――山下さんがLGBTの問題に取り組むことなったきっかけについて、教えていただけますか?

    もともと弁護士になる前に、ゲイ・カップルの相続のトラブルが目の前で起きたんです。これが今、弁護士としてLGBTの問題に取り組んでいる原点です。

    余命わずかとなった知り合いから、長年連れ添ってきたパートナーに全財産を譲り渡したいので、書類に不備がないかどうか見てほしい、と連絡がありました。結婚しているカップルであれば、遺言がなくてもパートナーには相続権があります。しかし、彼らは同性カップルでした。

    当時のエピソードをLGBT支援法律家ネットワークのサイトに、こう書きました。

    彼は意識が朦朧としていることもあって,数行の遺言状さえ書くのが辛い状況でした。文字のサイズは巨大,形も歪み,そして何度も何度も漢字を間違え,その度に意地になって綺麗に書き直そうとします。私は遺言状のひな形を見せながら真横で彼が懸命に文字を書くのを見守るのがとても苦しくて,その場から逃げ出したい気持ちにさえなりました。

    そうして何十分もかかって完成した遺言状は,まるで小学2年生が書いたような,平仮名だらけの「いごんじょう」でした。

    ようやく養子縁組届,遺言状を作成し終えて,養子縁組届を区役所へ提出しようとしたときでした。地方から病床の彼の親戚が駆けつけてきて「死亡直前の状態を利用してこいつらが何か企んで署名押印させている,一体何の不正をしているのか」とものすごい剣幕で迫ってきたのです。

    法律上は,たとえ親戚が異議を唱えていても,養子縁組届をする当事者同士の合意が優先します。しかし,死を目前にした状況で焦っていたパートナー側が急ぐあまり,親族への説明を欠いて要らぬ誤解を招いてしまったのでした。

    申立代理人の紹介 | 同性婚人権救済弁護団

    ■当事者と弁護士をつなぐLGBT支援法律家ネットワーク

    ――他に、当事者の方との出会いはありましたか?

    あと、弁護士になった後で、名古屋のゲイ・カップルが、東京の私の事務所に相談に来て、「婚姻届を出したら不受理になるから、裁判やりたい」って会いに来たんです。

    20代の若いカップルでした。「今、婚姻届出せないことで、何に困ってるの?」と聞いたら、「今のところ何も困っていない。問題提起がしたいんだ」と。

    そのときは、「困っている人の件で手一杯で、困ってない人の事件は受けられない。社会とか裁判所も、困った事実があって初めて動くんだよ」という話をしましたね。

    「だけど、せっかく名古屋から東京に来てくれたエネルギーは大事だと思うから、君たちは名古屋にいて、大阪に(当時は大阪府議会議員で現LGBT政策情報センターの代表理事の)尾辻かな子さんという人がいる。東京、大阪、名古屋で一斉電話相談をして困っている人が弁護士に相談して、裁判したいってなったときに、今困っていない君たちがサポートをする、ということであればサポートするよ」と。

    そうやって立ち上がったのが、LGBT支援法律家ネットワーク。2007年のことです。

    ――そんなに前から活動されていたんですね。

    過労死弁護団も、20数年前に全国一斉相談したことで、当事者が弁護士とつながって、裁判が重なって変えてきたという歴史がありました。2007年当時、LGBTの法的問題で何が問題なのかといったら、困っているゲイやレズビアンといったセクシュアル・マイノリティが、弁護士とつながっていないことだったんですね。司法アクセス障害というんですけど。

    当時のメンバーはかき集めても10人足らずくらいで、時期尚早だったため、電話相談は実施されませんでしたが、少なくとも、この問題に取り組む法律家が全国のどこにいるかわかるように、メーリングリストでゆるやかにつながっていきました。

    ——今、メンバーは何人ほどですか?

    勉強会を行うメンバーは、今は約90人になりました。LGBT当事者の人、当事者でない人、半々くらいです。カミングアウトしている人も、していない人もいますね。

    北は北海道から南は熊本まで。今では弁護団を組んだり、イベントをやったりしています。少しでも困っている当事者が、どこに相談にいったらいいのかわからない状況を解消するために活動しています。

    ——LGBTに理解がある弁護士がわかる、というのは大きいですね。

    法律トラブルで困っているとき、当事者は、本当にこの弁護士は私の話を受け止めて、味方になってくれるのかって不安になるわけです。とくにセクシュアリティに関することなので。そのハードルがぐっと下がるだけでも意味はあると思います。実際に困っている人が、場合によっては裁判したり、今回のように人権救済申し立てをしたり、社会とつなぐことが法律家の役割かな、と。

    ■多岐に渡る、LGBTの法律トラブル

    ——これまで、LGBTに関連してどんな事件を担当されましたか?

    いろいろなケースがありますが、私は子供の問題にも取り組んでいるので、LGBTと子供の問題に接しますね。10代のセクシャル・マイノリティを虐待から保護する事例もあったり、あとはLGBTの当事者側が、「自分の子供を、家族としてきちんと認めてほしい」ということで、性同一性障害のお父さんの事件の弁護団長もやりました。

    ——どんな事件だったのでしょうか。

    性別の取り扱いの変更で男性になった夫と、妻の間に、第三者の精子提供の人工受精によって長男が生まれました。

    条文通りであれば「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(民法772条1項)ので、父子関係を認めなければならないんですが、役所は『血のつながりがない』として認めなかった事件です。最終的に2年かけて、最高裁で父子関係が認められました。

    ――LGBTに関する法律トラブルは、どんなものがありますか?

    ありとあらゆるものがあります。セクシュアリティの話は、ベッドの上の話じゃなくて、その生活と人生全般に行き渡る人間の基盤そのものなので、法律トラブルも本当に多岐に渡るんですよ。

    住まいや老後の話から、刑事手続きだったり、DV、ストーカーだったり、就職のことだったり、学校のことだったり、生命保険のことだったり、難民だったり……。なので、LGBTの法律トラブルといっても1個1個のテーマは本当に多岐に渡るので、その度に調べたり、専門の法律家に聞いたりしています。

    ■同性婚の憲法解釈、人権救済申し立て

    ――2015年の新年に、同性婚の人権救済申し立てすることを決めたそうですが、きっかけは? 渋谷区の同性パートナーシップ条例などが話題になる前ですね。

    ここ1、2年で法律相談のケースも増え、LGBT当事者の人たちの動きも一層活発になり、社会の関心も高まってきていました。私自身、ちょうど(担当していた)大きな事件が落ち着いて時間ができたので(笑)、新年の抱負として人権救済申し立てについて話したら、メンバーがやろうやろう、といってくれたんです。

    結果的に、3月の渋谷区での同性パートナーシップ条例成立、6月のアメリカ連邦最高裁判所の判決が重なったのですが、この間の社会の動きからすれば、偶然というより、むしろ必然だったと思います。

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    ――憲法について伺います。憲法第24条1項には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」と規定されていますが、同性婚については、どう解釈すればいいのでしょうか。

    現行の憲法は、封建的な家制度から人々を解放して、女性と男性が、対等に婚姻生活を営めるようにする、というものです。

    「両性の合意のみ」という表現は、「戸主の同意なく当事者の合意で成立する」というところにポイントがあります。そして、男女平等の理念から「両性」という文言になったので、制定したときは、同性婚は念頭に置かれていなかった。ですから、同条項が同性婚を禁止しているわけではない、というのが法律家の一般的な見解ですね。

    ——今回、同性婚の人権救済申し立てを行ったのは、当事者ですね。

    トランスジェンダーの人もいますが、ゲイやレズビアンなどのLGBT当事者です。海外在住の2人を含む455人が集まりました。

    申し立ては、「この人が人権侵害を受けている」と、当事者じゃない人がすることもできるんですが、今回は当事者でない方には申立人にではなく、署名での応援をお願いしました。申し立てに賛同する署名も、1万1680筆集まりました。本当にたくさんの支援の声が寄せられましたね。

    ——あらためて、日弁連に申し立てすることは、どんな意味を持つのでしょうか。

    人権救済申し立てをすると、日本の弁護士が全員加入している日本弁護士連合会が、同性婚が人権侵害であるかどうかを調査します。1〜2年かけて、ちゃんと調査するんですよ。

    これにより「警告」「勧告」「要望」などの人権救済の措置を、相手方に対してとります。今回の申し立ての相手方は、内閣総理大臣と法務大臣と国会なので、それらに書面を送ります。この措置は、法的な強制力はありませんが、弁護士会による法的な判断として、今後立法が検討されたり、裁判が行われたりするときには、大きな影響力を持つことになります。

    ——以前、「家族法」に関することは、立法はなかなか動かないのが現実、とお話されていましたが……。

    そうですね。非嫡出子の相続分を、嫡出子の相続分の2分の1とする民法が、違憲であると最高裁判所大法廷で決定が下されたのが、2013年。明らかな差別なのに、こんなに時間がかかりました。

    夫婦別姓も、これまでに何度も議論されていますが、ようやく秋に大法廷です。これもどうなるかわかりません。ですから、同性婚についての議論は、本当にこれからなんです。

    ——渋谷区や世田谷区など自治体による同性パートナーシップに関する取り組みが始まっています。

    いきなり法律が変わることはありませんが、こうした議論と制度づくりの積み重ねがあって、国会で、民法で改正されていく必要があると思います。

    6月にアメリカの連邦最高裁判所が、同性婚を認める判決を下しましたが、これも各州で議論されて立法される州があり、反対する州があって、その積み重ねがあって、連邦最高裁判所の判断になったんです。これからです。

    ■LGBTの暮らしやすい社会、私たちができること

    ——議論はこれから、とのことですが、同性カップルやLGBTの人たちが暮らしやすい社会にするために、私たちが今できることは何でしょうか。

    「自分の周りに当事者がいない」という人もいますが、それは、カミングアウトしていない当事者、できない当事者がまだまだいっぱいいるからです。実際には、20人にひとりくらい、すぐ隣にいます。

    でも、いわゆる「ホモネタ」や「おかまネタ」で笑う人に対して、ありのままの自分のことを話すことはできません。「ホモネタ」や「おかまネタ」で笑うことは、憎悪というほど強いものはありませんが、少しずつのマイナスの気持ちが、ひとりの当事者にのしかかって生活や人生を押しつぶすのです。

    だから、私たち1人ひとりが今できることのひとつは、その逆をすること。

    ——逆、ですか。

    つまり、セクシュアル・マイノリティについて、少しずつでもいいから肯定的なメッセージを出すことです。

    アメリカで同性婚が認められたときに、多くの人がSNSのアイコンを続々とレインボーに変えていましたが、LGBT当事者にとって、とても心強いことだったと思います。

    クラスメイトや同僚が「ホモネタ」や「おかまネタ」で笑い合っているとき、当事者ほど「やめてほしい」と声に出していうことはなかなかできません。そこに、当事者ではない人が、当事者ではないからこそ「それはおかしい」ときちんと指摘することも大事だと思います。

    LGBTについてのイベントや社内研修も増えましたし、ネット上で記事もたくさん読めるようになりました。「まだ勉強中だけど、大事な問題だと思っている」。そういうプラスの書き込みをSNSでするだけでも、意識は問題が可視化されて、さらに人と人がつながっていくんだと思います。


    出典:同性婚の「人権救済申し立て」は、どんな意味を持つのか。 LGBT支援の弁護士・山下敏雅さんに聞く

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    2015年9月4日、同性愛者への平等な権利を訴え続けている女性歌手のジョリン・ツァイ(蔡依林)が、11月開催のコンサートで自作のフォンダンケーキをチャリティー販売する。NOWnewsが伝えた。 

    ジョリン自身は同性愛者ではないが、同性婚を含め性的少数者に平等な権利が与えられるべきだと主張し続けている。最新アルバムでは同性愛について歌った「不一様又怎様」「第二性」の2曲を収録。今年5月のコンサートでは関連団体をサポートするため、オリジナルグッズをチャリティー販売し、性的少数者支持への貢献が広く認められている。 

    ジョリンの貢献に感謝を示すため、台湾伴侶権益推動聯盟の許秀[雨/文]理事長がこのほど、お手製のフォンダンケーキをプレゼント。活動を象徴するレインボーカラーをあしらったものとなっている。これに対しジョリンも、最新ツアー「Play」の11月開催の台北アリーナ公演で、得意なお菓子作りの腕前を生かし、フォンダンケーキをチャリティー販売することを発表した。 

    料理学校の生徒の協力により作られるという数量限定のこのケーキ。同性婚支持を示すため、新郎新婦の人形をあしらったデザインになる。なお、収益金は全て同聯盟に寄付される。

    出典:同性婚を支持するジョリン・ツァイ、コンサートで自作ケーキ...:レコードチャイナ

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    「保守化する米国」という言葉をよく耳にしますが、少なくとも同性婚の問題ではかなりリベラル化しているようです。

    6月26日、米連邦最高裁は「同性婚は合憲であり、各州はそれを制度的に保証するべき」との判断を下しました。実は今、同性婚に対して米国の保守派やキリスト教でさえも容認する動きが一部で出ているのです。

     以下では、こうした動向を米国の世論調査などから明らかにし、今後の我が国の安全保障上の課題にも結び付く動向であることを指摘したいと思います。

    「同性婚」容認へ傾く米国民

     米国を代表する世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」による同性婚に対する調査では、2004年に反対60%、賛成31%だったのが、2015年には反対39%、賛成57%と逆転しています。特にこうした傾向は若年層に強く、35歳以下では78%が賛成しており、より一層の米国世論における、今後の支持の高まりを予想させます。
      「自分の子供が同性愛者だとしても許容できるか」については、2004年に「許容できない」と答えたのが60%、「許容する」が36%でした。しかし、2015年には、「許容しない」が39%、「許容する」が57%と逆転しています。

     
    こうした背景には、今年の調査で88%の米国人が「同性愛者の友人が存在する」と回答したように、社会的に同性愛者が増加し、しかも養子や人工授精などで子育てをするなど身近な存在になっていることが指摘されています。

     党派別で見てもこうした流れは見受けられます。2004年に「同性婚を容認する」と答えたのは、民主党支持者40%、無党派37%、共和党17%でした。これが今年では、民主党支持者65%、無党派65%、共和党34%となっているのです。やはり共和党支持層は低いままですが、それでもわずか10年で2倍になっていることは重要でしょう。

     保守強硬派とリベラル派の2人の弁護士がタッグを組んで、同性婚を容認すべきだと裁判を起こしたことは大いに話題になりました。2人の弁護士は、ブッシュ大統領とゴア元副大統領の大統領選挙をめぐる裁判で激突していたのですが、同性婚の容認に向けて手を組んだのです。この“夢のタッグ”は映画化され、来年初頭に日本でも公開予定です。

     また、強硬な保守派で知られるチェイニー副大統領でさえ、彼の次女が同性婚を行い人工授精で子育てをしていることもあり、2009年に同性婚を支持すると公言しています。この他にも、共和党議員の「転向」が近年相次いでいます。

     宗教界でも同様の傾向が出ています。リベラル系の「主流派プロテスタント教会」は同性婚容認が34%(2004年)から62%(2015年)と増加しています。そして、カソリックは36%から56%に、そして俗に「宗教右派」として括られてしまうことが多い、厳格な保守派「エヴァンジェリカル」でさえ、11%から27%と増えています。

     「宗教右派」でさえ、たった10年で3人に1人が同性婚を容認するようになったという事実は、大きな変化と言えるでしょう。実際、「宗教右派」とされることの多い、モルモン教は同性愛「差別」を否定するようになり、7月2日の報道では、モルモン教の本部が存在するソルトレイクシティの同性愛コミュニティセンターに初の寄付を行ったとされています。

     
    また、メソジストやバプテストなどでも、同性婚容認を許容する動きが出てきています。こうした背景の1つには、「同性婚への断定的な否定」が若年層の教会離れの原因になっていたことがあるようです。同性婚を容認することで若年層を教会に呼び寄せたいといことなのでしょう。

    南部はまだまだ否定的だが・・・

     ただし、いくつかの留意が必要です。

     第1に、あくまでも「同性婚」の容認であって、「同性愛」の容認ではないことです。

     実は一部の米国の憲法学者は、「性的嗜好に基づく差別を禁止している連邦法はない」と指摘しており、今回、同性婚が合憲化されたからといって、同性愛差別が完全に禁止されるわけではないと示唆しています。また世論調査からもこうした傾向が見受けられます。

     第2に、同性婚容認は、あくまでもリベラルな西部と東部、特にエリート層における認識だということです。例えば、米国南部のある同性愛者は、地元で同性愛者だとはとてもとても名乗れないと言っていたとも聞きます。実際、2013年の最高裁判断で、多くの州が雪崩を打って同性婚容認に傾きましたが、全ての南部諸州は今年連邦最高裁が容認するまで同性婚を違法としていました。

     第3に、この6月にワシントンポストの記事が「保守派は抵抗を諦めたかもしれないが、共和党はまだ諦めていない」と指摘しているように、共和党大統領候補のほとんどは同性婚に否定的です。これは、予備選挙で勝ち抜くためには、投票に熱心な少数の強硬な保守派に頼らざるを得ないからです。

     とはいえ、こうした留意点を踏まえてもなお米国社会の大勢が動きつつあることは認めざるを得ないでしょう。

     

    日本にも「同性婚容認」を求めてくる?

     では、こうした米国における変化はどのような意味があるのでしょうか。それは近い将来、日米関係上の問題になりかねないということです。

     同性婚の容認がなぜ外交問題に発展するのかと不思議に思われる方もいるでしょう。それは以下のような理由によるものです。

     これまでがそうであったように、米国は国内の価値観の転換を外交政策に反映させることが多々あります。実際、有力な大統領候補のヒラリー・クリントンは、国務長官時の2011年12月、世界人権デーにて「同性愛は西洋社会の現象というのは間違っており、人類の現実である。世界的に同性愛者の人権を擁護しなければならない」という趣旨の演説を行っています。

     つまり、将来的に日本の「同性婚容認」を米国が求めてくる可能性が高いということであり、同性婚を容認していない日本との間の火種になりかねないのです。この場合、日本は人権問題に鈍感な国とされ、中国と同様の存在と米国民の多くから思われてしまうことになります。中国は「同性婚」問題には、かなり否定的な態度を示しています

     日本の核武装を肯定した発言でも知られる、親日派のマーク・カーク上院議員(共和党)は、「同性婚容認」を共和党の上院議員では2番目に表明しているなど、この問題に熱心に取り組んでいます。「同性婚」問題で日本が否定的な立場を継続すれば、こうした親日派議員も態度を変えてしまうかもしれません。

     

    韓国からの“口撃”を封じることにも有効

     これは外交上、そして日本の安全保障上、非常に懸念すべき事態です。つまり、もしも日中間の尖閣諸島をめぐる紛争が起きても「人権後進国同士の戦争」と思われてしまい、米国の日本防衛への意思が低下しかねないということです。

     その意味で、我が国は「同性婚」問題を日米関係上の論点として考え、好き嫌いは別として積極的に容認すべきではないでしょうか。日本が容認に踏み切れば、米国の世論やエリート層の対日防衛意思の強化を促し、日本への好意的態度を引き出すことにもつながるでしょう。

     また、韓国からの“口撃”を封じることにも有効なはずです。韓国は「従軍慰安婦」や「強制徴用」を引き合いに出して「日本は今も昔も人権後進国である」と米国で主張しています。しかし、日本が同性婚を容認すれば、「過去はともかく、今や日本は人権大国である」と有効な反論ができるでしょう。ちなみに韓国も中国同様に同性婚にはかなり否定的な立場です。

     何より、「歴史問題」での妥協することは我が国に政治的コストを強いる上に、どの日本人も助けられません。しかし「同性婚」の容認は、それらより低い政治的コストで、少なくない日本人を助けることにつながるでしょう。

     外交の手段として決して非現実的なことを述べているわけではありません。モンゴルやネパールなど、大国に挟まれながらも自立を志向している小国は「同性婚」もしくは「同性愛」容認政策を打ち出しています。筆者は、これは一定の戦略的な示唆を我が国に与えてくれていると見ています。
     

    出典:Bpress(日本ビジネスプレス)

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    韓国の同性愛者の権利活動家で映画監督の金趙光秀(キムジョ・グァンス、Kim Jho Gwang-Soo)氏(50)が、2013年に提出した同性パートナーとの婚姻届を拒否した当局を相手取り、訴訟を起こした。韓国で同性カップルが法的な婚姻関係を求め訴訟を起こしたのは初めて。

     金趙光秀氏とパートナーの金承煥(キム・スンファン、Kim Seung-Hwan)氏は2013年9月にソウル(Seoul)で屋外結婚式を挙げ役所に婚姻届を提出したが、役所側は受理を拒否していた。ソウル西部の地方裁判所では今月6日、同訴訟の審理が非公開で行われた。

     保守的な韓国では、金趙光秀氏のように同性愛を公言している著名人はまれ。同国では同性愛行為は違法ではないが、同性婚は認められていない。また同性愛は外国のものと考える人が多く、同性愛者やトランスジェンダー(性別越境者)の多くはその事実を公言しないまま生活している。

     今回の訴訟は、先月26日に米国の連邦最高裁判所が全米で同性婚を合法とする判決を下したことから、いっそうの注目を集めている。同28日に韓国で開かれた性的少数者のパレードでは、米国での判決を祝う声が上がっていた。


    出典:AFPBB News

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